月夜の翡翠と貴方



ルトは、少し私の姿を見たあと、ふ、と優しく微笑む。

…まるで貼り付けたような、笑顔。

仕事用の、偽りだらけのルトの笑顔。


「…それはよかった」


嫌いだな、と思った。

今のルトの優しい笑顔も、穏やかな声色も。


全部、全部嫌いだと、思った。


マテンは私の方を見ると、私の頬に手を添えた。


「…美しい……全て、美しい」


頬から、首筋、そして顎。

手を滑らせ、撫で、愛でる。

うっとりとした顔で、私を見つめて。


…ルトが、見ているのに。


何故私は、本当に愛しいと感じる人の前で、別の人間に触れられているのだろう。

怖くて、ルトの方を見ることができない。

…触らないで。

触らないで。

ルトが触れたあとを、黒く染めないで。

無表情の裏に、激しい嫌悪をにじませる。