月夜の翡翠と貴方



彼は恐らく、一般より奴隷に対して良い感情を抱いていない。

私に敵意しか向けてこないこの黒髪の男と、私に微笑みすら向けてくるこの紫髪の男と。

正反対な召使いに挟まれた私は、なんだか変な気分だった。

このふたりが同じ主人に仕えているなんて、信じられない。


「行くぞ」

どこへ向かっているのかわからないまま、また長い廊下を歩く。

しばらくすると、黒髪の男が私に低い声で淡々と告げた。


「今、マテン様は客室でシズどのと話をされている」


その言葉に、心臓がどくんと波打つ。


…ルトが、来ている。


そう思い、スカートを握りしめた。

…気にはしない。

どうせ、会わないのだから。


しかし、男の言葉は、私の思いを見事に裏切るものだった。


「今から、客室に行く。失礼のないように」


…え?

どういうことだ。

今、客室ではマテンとルトが話しているのではないのか。

まさか、そこに私が入るのか?

だから、こんな上等な服を着せて。