…奴隷屋に比べれば、スープがあるだけ、ましだ。
そう、一ヶ月前に、戻るだけ。
私がそう思えば、それでいいのだから。
「来い」
手枷をつけられると、男達について行き、地下を出る。
明るい場所に出て来たことで、急に眩しく感じた。
絨毯のひかれた長い廊下。
掃除中なのか、雑巾を持った召使いの女が、大きな窓の前に立っている。
女はこちらの存在に気づくと、一瞬目を見開いたあと眉を寄せ、そそくさと別の場所へ移動していった。
…フードを被り、手枷をつけられ、男ふたりに連れられて歩く様は、まさに怪しい奴隷そのものなのだろう。
男達の足が止まり、着いたのは、やはり大きな扉の前。
…ここが、マテンの部屋なのだろうか。
男のひとりが扉を開ける。
しかしそこには、マテンは愚か、人ひとりいない。



