月夜の翡翠と貴方



…そう、優しい。

ルトは私に、随分とお金を使ってくれていた。

まず、ルトと同じ食事をとるというだけで、普通に考えておかしなことなのに。

衣服に、下着に、櫛に。

依頼の品だから傷つけてはならないといっても、所詮はただの奴隷。

けれど彼は私に対して、本当に言葉通りの『友人』をしてみせた。


平民と変わらぬ態度で接し、明るく笑い、気を遣い、手を繋ぎ、馬鹿な輩から私を守る。

あのときスジュナに『恋人』だと思われても仕方のない程度には、『親しく』していた。

…本当に。


優しくて、優しすぎて。


だから今、私は苦しいのだ。

ルトの優しさに、慣れてしまった。

ルトがくれるものを、いつから当たり前に受け取るようになったのだろう。


「…朝食を食べたら、私の部屋へ来なさい。もうすぐ昼だ」

そう言うと、こちらに背を向けてマテンは歩き出した。