月夜の翡翠と貴方



当たり前だ。

昨日、ルトは報酬は明日、と言われていたのだ。

では、今もこの邸の近くに、ルトはいるのだろうか。

流石に地下にいる私と会うことはないだろうが…


眉を寄せて考えていると、突然マテンが「ジェイド」と呼んだ。

小さな違和感の塊が、私の奥をなぞる。

…ルトにこの名をもらってから、私を『ジェイド』と呼ぶ人は、彼しかいなかったから。


「…その服は、シズどのが?」


マテンの目は、私が着ている白い麻の衣服に向けられていた。

もうずっと着ているから、少し汚れてしまっている。

花の刺繍が少しだけついている、シンプルな、フードがついたワンピースのような形。

けれど私の事を思って、ルトが買ってきてくれたもの。

買ってきてくれたときは大きく感じたこれも、今は丁度良くなった。

…これから太ってもらうから、と言ったルトの言葉は、見事に今、その通りになっている。


私が小さく頷くと、マテンは皮肉げに笑った。


「…実にみずぼらしいが…奴隷のお前には、少し贅沢なデザインではないか?平民が着るもののように見える」

シズどのは優しいな、とマテンが呟いた。