月夜の翡翠と貴方



「お前の痩せ方は健康的じゃない。もうちょっと太った方が、丁度いい」


そんな事をいいながら、彼は指先をなぞるように絡め、こちらを見つめてくる。

私の心臓はおかしなほど、大きな音を立てていた。


…なんなんだ、この男は。

わざとなのか。

今日一日を過ごして思ったが、ルトは馬鹿そうに見えて、なかなか自身の魅力を器用に使いこなす。

もともと顔立ちが整っている上に、子供のように明るく笑うものだから。

今日行った店の女達は、まんまと魅せられ、惚けていた。

実に、達の悪い男である。


そこで、ルトが手を離し、席を立った。


「…食い過ぎたかも。ちょっと外の空気吸ってくる」

…確かに、あまり顔色が良くない。

私はわかったと言って、店の外へ向かうルトの背中を見送った。