月夜の翡翠と貴方



きっと、私が細いということを言いたいのだろうけれど。

指を絡められる心地をこそばゆく感じながら、私は慌てて白い麻に縫い付けられた、綺麗な刺繍に目線を逸らした。

「……じゃあどうして、こんなにぶかぶかなの…?」

…そう、大まかなサイズは、良いのだけど。

何故かこの服は、私には余裕がありすぎる。

着心地が悪い訳ではないが、私の細さがわかっていたなら、何故こんなに大きいのだろう。

「…わざとだよ。お前は細すぎるんだ。確かにファナは細いほうが合ってるかもしれないけど。これから太ってもらうからな」

そう言うと、ルトは「だから、もっと食え」と私の前にある皿を指差した。


…太ってもらう、って。

そのために、わざと大きいサイズを?

準備が早すぎて、笑えてくる。