月夜の翡翠と貴方



ぼうっとする頭のまま、身体を起こす。

硬く冷たい床で、身体が冷えている。

寝た心地がせず、目をこすった。



「おい」

地下の扉の方から、召使いの男の声がした。

「食事の時間だ。マテン様が待っている」

キィ、と檻の扉が開く。

私は髪の奥から目をのぞかせて、男を睨んだ。

男が目を細めて私を見る。


「…汚らしい奴隷が。どんなに見目が良かろうが、所詮は下衆。マテン様のコレクションとなれるだけ、救われたと思え」


そう言うと、私から目を離し地下の階段を上がっていった。

…言われなくとも。

下衆でもなんでも、言われ慣れたことだ。

誰よりも私がわかっている。


男について行くと、豪華な部屋に入れられた。

部屋の中心に、食事の席についたマテンが見える。

私は虚ろな目を動かして、マテンを見た。


「…ぞくぞくするね、君の目は…檻のなかで、狂っていくがいいよ」

そう言って、ニヤニヤと嗤う。

感情のない顔で、それを黙って見ていた。