月夜の翡翠と貴方



全部、全部。


「………っひっく…」


弱い私と、ずるいルトのせいだ。


こんなにも、涙が止まらないのは。







「……よい、しょっと」

ガサ、と木々の間を通る。

今の茜色の空と、同じ色をした髪をひとつに結んだ彼女は、緑の草壁に囲まれた白い屋敷を見つめた。


「カナイリー家はあれね…」


無駄なくらいに綺麗に整えられた庭が、マテン・カナイリーの美への理想が高いことを伺わせる。


女はふぅ、と息をつくと、友人の姿を探し始めた。

今頃後悔しているだろう、馬鹿な幼馴染のひとりを。


「…欲しいものがあるなら、きちんとそれを誰かに言わないと」

だからあの子は馬鹿なのよ、と彼女は心のなかで呟く。