全部、全部。
「………っひっく…」
弱い私と、ずるいルトのせいだ。
こんなにも、涙が止まらないのは。
*
「……よい、しょっと」
ガサ、と木々の間を通る。
今の茜色の空と、同じ色をした髪をひとつに結んだ彼女は、緑の草壁に囲まれた白い屋敷を見つめた。
「カナイリー家はあれね…」
無駄なくらいに綺麗に整えられた庭が、マテン・カナイリーの美への理想が高いことを伺わせる。
女はふぅ、と息をつくと、友人の姿を探し始めた。
今頃後悔しているだろう、馬鹿な幼馴染のひとりを。
「…欲しいものがあるなら、きちんとそれを誰かに言わないと」
だからあの子は馬鹿なのよ、と彼女は心のなかで呟く。



