驚いたような顔でこちらを見てくるものだから、少し唇を尖らせて「なに」と不機嫌そうに言ってしまう。
けれどルトは少し笑って、籠のひとつを指差した。
「これふたつ下さい」
老婆は、やはり最初と変わらぬ微笑みを浮かべていた。
*
店々が並ぶ広場の近くの、木陰のそばにあった大きな石の上に座る。
先に買った食べ物を食べ終わると、ルトは「デザートね」と笑って、老婆の店で買ったものを出した。
ルトが買ったのは、林檎のパイ。
きっと、私が言った『ルトのいちばん食べたいと思うもの』だと思うが…
「ジェイドの顔が真っ赤だったから、林檎食べたくなった」
「なっ………………」
どういう理由だ、それは。
ルトは私を見ると、楽しそうに「嘘だよ」と笑った。
「俺が林檎好きなだけ」
…じゃあ、最初からそう言えばいいだろう。
からかわれたことへの不満を顔に露わにすると、ルトはやはり笑う。
…ルトだって、顔、赤くなったくせに。
…なんてことは言わないが。



