月夜の翡翠と貴方



驚いたような顔でこちらを見てくるものだから、少し唇を尖らせて「なに」と不機嫌そうに言ってしまう。

けれどルトは少し笑って、籠のひとつを指差した。


「これふたつ下さい」


老婆は、やはり最初と変わらぬ微笑みを浮かべていた。







店々が並ぶ広場の近くの、木陰のそばにあった大きな石の上に座る。


先に買った食べ物を食べ終わると、ルトは「デザートね」と笑って、老婆の店で買ったものを出した。


ルトが買ったのは、林檎のパイ。


きっと、私が言った『ルトのいちばん食べたいと思うもの』だと思うが…


「ジェイドの顔が真っ赤だったから、林檎食べたくなった」

「なっ………………」

どういう理由だ、それは。

ルトは私を見ると、楽しそうに「嘘だよ」と笑った。


「俺が林檎好きなだけ」


…じゃあ、最初からそう言えばいいだろう。

からかわれたことへの不満を顔に露わにすると、ルトはやはり笑う。


…ルトだって、顔、赤くなったくせに。

…なんてことは言わないが。