月夜の翡翠と貴方



そう思いながら見ていると、すぐそばから視線を感じた。

老婆が、やはり変わらぬ笑みで私を見ている。

なにか、と目で伝えると、老婆は目尻を下げ、口を開いた。


「…とても綺麗なお嬢さんだね」


同意を求めているのか、老婆の視線はルトに向かっている。

ルトは少し老婆を見つめたあと、私を見て微笑んだ。


「…でしょう。俺もよく思います」


少しだけ、顔が熱くなる。

私はどんな反応をしていいのかよくわからないまま、「ありがとうございます」と言った。

老婆は、相変わらず優しい笑みでこちらを見つめていて。


…ああ、なんだか。

老婆の笑みが、素直にそう思ってくれている、とわかるものだからか。

なんだか、わからないけれど。


…前のように、それを皮肉に受け取る感情は、湧いてこなかった。


素直に、嬉しい、と思えている気がする。

頬の熱さを冷まそうと、手の甲を頬に当ていると、隣のルトと目があった。