月夜の翡翠と貴方



着いた店には、穏やかな微笑みを浮かべた老婆がいた。


藁で編まれた様々な籠のなかに、たくさんの果物と、それを使った色んな種類のお菓子が入っている。

とても上手に作られていて、どれも甘くて美味しそうだ。


「甘いの好きだよな?」


ルトが、籠のなかを見つめる。

訊かれた私は、少し驚いた。


「え…」

「あれ、そうでもなかった?」

「…いや…」


確かに、好きだ。

自分でも、結構な甘党だとは思う。

けれど、私はそんなことルトに一言も言っていない。


「甘いの食べてるとき、いつも少し嬉しそうだから」


気づいてない?と笑顔で言われる。

…そ、そうなのか。

自分では全く気づかなかった。


「何か好きなの、あったかい」

老婆が優しい笑みでこちらを見つめている。

「ちょっと待って下さい」

まだ迷っているのか、ルトは籠を見渡している。

…ルトも、甘いものが好きなのだろうか。