月夜の翡翠と貴方



「…好みに合わなくても知らないよ」

「…いいよ。食べたいって思うの、それしかないから」

「………そ」


…やっぱり、おかしいよ。ルト。


ルトに買われてすぐのころと、まるで逆じゃないか。

ルトがふざけたことを言って、私が戸惑って。


繋がる右手が、急に恥ずかしい。

…苦しい。

とても、苦しい。

けれど、この苦しさはいつも感じるようなものじゃなくて。


少しだけ甘いのが、やけに苦しい。


思わず、唇を噛む。

あんなの、見せられたら。

ルトの頬の赤みが伝染するように、私の顔も熱くなった。






しばらく歩いていると、ルトが「あ」と声を出した。

何か見つけたの、と訊くまでもなく、そちらへ引っ張られる。