月夜の翡翠と貴方



「ルトの食べたいもの」

「俺はいっぱいあるよ。出来れば全部食べたいね」


楽しそうに、店々を眺めるルト。


「…じゃあ」

ルトが見つめる店々の食べ物を見つめる。

そして、彼を見上げる。


「ルトがいちばん食べたいって思うものを、食べたい」


眺めていた店から目を離し、驚いた顔で見つめられた。

「駄目?」

「…いや、駄目じゃないけど…」

これは、素直に食べたい、と言えるのだ。

これでは駄目なのだろうか。


ルトは少しの間迷うように目を泳がせたあと、僅かに頬を赤くさせた。

…本当に僅かに、だけれど。


「…ル、ト」

「…なに」


声が、少し低い。


どうして、そんな顔してるの。

私から目を離し、店を見つめる。

…顔が赤いのをごまかそうとしている、と思うのは、やはり自惚れだろうか。