月夜の翡翠と貴方



ルトは私の荷物を持ってこちらに手渡すと、「行こうか」といつものように笑った。






川沿いの道を歩いて行くと、広い道に出た。

近くに昨日さまよったらしき森が見えるだけで、周りは山と草花だけ。

ルトが地図と格闘した末、どうやらちょうど森を抜けたところだったらしく、ふたりで安堵のため息をついたのだった。



「…どっか、食事できるとこないかなぁ…」

ぐう、と小さくお腹がなる。

ルトのつぶやきは虚しく、周りは民家すらない。

しかし、見渡せば畑くらいはあるのだから、探せば民家ならあるだろう。

次の街は遠いらしいから、この辺で食事をとりたいところだが。


「…あ、関所なら近い」

地図を見ながら、ルトが関所の方角を探す。

確かにディアフィーネの商人が他地域と交流を持つ関所は、様々な売買がされているとセルシアにきいた。

食べ物の売買がされていてもおかしくないだろう。


「西だな」

そう言うと、ルトはすっとジェイドの手を掴んだ。

「早く行こ。腹減った」

いつもの明るい笑顔。