月夜の翡翠と貴方



あれから、ナタナがどうしたかもわからない。

彼は、私がまだ幼かったからか、人形同然に動かなかったからか。

私が彼のベッドで寝たのは、奴隷屋へ売られる少し前の、一度切りだった。

飽きた、とも何も言わず、彼は美しい笑みだけを向けて、私を奴隷屋へ置いて行った。

彼を恨んではいない。

ただ、情けないだけだ。

自分が。


「……………ねぇ、ルト…」


「んー?」


寝ているかと思ったら、案外普通の顔で彼はこちらを見上げてきた。

私は碧の髪を触りながら、ぼんやりとした目をせる。


「……私、良いご挨拶、出来てたかなぁ…」


ルトを見ると、案の定よくわからない、という顔をしている。

「挨拶?」

「…うん。ロディー様に」

「…ああ」

ルトが起き上がる。

別に、わざわざ起き上がらなくてもいいのに。

話を聞いてくれるだけで、いいのに。