月夜の翡翠と貴方



「…セルシア様」

もう一度呼ぶと、セルシアは嗚咽を漏らしながら、私へ抱きついた。


「…っごめんなさいっ…私、私っ……………」


自分がしたことが結構な大事であるとわかっているのか、ひたすらにごめんなさい、と繰り返す。

「…大丈夫です。今、ノワードさんやほかの使用人の方々が、お客人の混乱を沈めています」

背中をさすると、セルシアは段々と落ち着いていったようだった。

そして私から離れると、唇を噛んでうつむく。


「…なんで飛び出しちゃったのか、話してくれる?」

ルトが優しく尋ねると、セルシアは静かに「…はい…」と返事をした。


彼女は一度鼻をすすって、小さな声をだした。


「…『夜会のあとは、昼の続きをしようか』と、言われたんです」


………それで、あんなに顔を真っ赤にしていたのか。


「…私、お昼のことを思い出してしまって。負けない、と思ったのですが、私と違って余裕そうなロディー様を見て、もうなんだか急に苦しくなって」


仕方ないだろう。

『キスの続き』なんて、何を連想させてもおかしくないというのに。


「踊ってる最中にそんなこと言うとか、あれだな。紳士じゃないな。ただの嫌な男」

ルトの言う通りなのだが、この男が言うと、正直説得力にかける。