月夜の翡翠と貴方



「………!」


その瞬間、セルシアの顔が朱に染まった。

そして、みるみるうちに唇が震え始めて....

足が、戸惑いで上手く動かせなくなっていた。

「え…どうしたんだよ」

ルトが動揺の声を出す。

何を言ったんだ、ロディーは。

周りの貴族達の数人が、ふたりの様子に気づきはじめた。

セルシアは明らかに様子がおかしいというのに、ロディーは至って変わらない様子で。


セルシアはそんなロディーを見上げると、苦しそうに顔を歪めた。

.....そして。


パンッ………と。

確かな、手が振り払われる音が響いた。

セルシアは、瞳に涙を浮かべている。

「……………っ」

唇を噛むと、そのまま中庭のある扉のほうへ、駆け出した。


「セルシア様っ………!?」


ノワードの叫びと共に、会場内がざわつき始める。

当たり前だ。

主役のひとりが泣きながら、会場を出て行ったのだから。


「ど…どうされたのですか…!?何が起こって…」

ノワードが青ざめながら、セルシアのあとを追おうとする。