「…セルシア様は、本当に良い執事に恵まれてる」
ルトの呟きに、益々ノワードは眉間のシワを深くしたのだった。
踊り始めて、少しの時間が経った。
数分といえば数分なのだが、セルシアとロディー以外の貴族達のなかには、一旦踊りを終え、新たなパートナー探しに勤しむものも出始めた。
先程発見したが、リロザもなかなか上品そうな令嬢と、優雅に踊っていた。
それを見たルトが、横で静かに「気持ち悪い」と呟いていたけれど。
もしかしたら、ルトもこんな風にリロザの『貴族』としての一面を見ることは、あまりないのかもしれない。
そんななか、セルシアとロディーは、やはりきらびやかな存在感を放っていた。
言葉こそ交わしている様子はないものの、なんとか互いに微笑みを浮かべることはできているようだ。
「…なんとかなりそーだな」
ルトがそう言って微笑む。
そうだね、と返事をしようとした、そのとき。
おもむろに、ロディーの顔がセルシアの耳元へ近づいた。
反射的にびく、と肩を震わせるセルシアに構わず、ロディーは微笑んだまま。
その耳元で、何かを囁いたのだ。



