月夜の翡翠と貴方



「………………お」


すると、ルトが入ってきた扉の方をみて、声を出した。

それと同時に、会場にいる数人の奏者たちの、ヴァイオリンの優雅な音楽が流れはじめる。

…主役が登場するようだ。


近くの扉が、キィ、と音を立てた。

ゆっくりと、両扉が開けられていく。

ガチャ……………


そうして見えたのは、薔薇の髪飾りに、美しいドレスを身にまとった、セルシアの姿だった。


「おぉ………………」

「お美しい…………」

どこからともなく、近くの貴族達の感嘆の声が聞こえてくる。

見にまとうものが全て純白なせいか、セルシアの桃色の髪が一層際立ち、映えていた。

コツ、コツ、と微かな音を鳴らし、セルシアが会場へ足を踏み入れる。

それと同じタイミングで、反対側の扉が開いた。


「ロディー様だわ………!」


近くの貴婦人が、扉から見えたその姿に、ざわっとどよめく。

静かに歩みを進めるロディーは、今日の昼に会った人物とは思えないほどの紳士然である。

騒ぐ貴婦人たちに、優しそうな笑みを浮かべて一礼した。