月夜の翡翠と貴方



髪を結んで、召使い用に布地を頭に巻いているので、髪が目立つこともない。

もうすぐ、セルシアが会場に入るだろう。

すると、隣でルトが「あ」と声を上げた。

「…? どうしたの」

「あーっと…うん、やっぱそうだ」

ルトは遠くのほうを、目を凝らして見つめている。

「何かあった?」

訊くと、ルトは「うん」と言って、苦笑いを浮かべた。


「…………リロザ、いた」


えっ。

「リ…リロザさん?」

「そ。あー、ここ一応ミューザの隣村だもんな。エルフォードがオリザーヌと親交あっても、おかしくないか…」

ということは、オリザーヌに招かれて、リロザが来たということか。

「…面倒だし、先に説明しといたほうがいいな」

それは、確かに。

ルトの前に立って目を凝らすと、リロザらしき金髪が、人々の隙間から垣間見えた。

「…あ、こっちくる」

頭上のルトの言葉通り、リロザがグラスを片手にこちらへ向かってきているのがわかった。