月夜の翡翠と貴方



「だから、お前をナタナに渡せば、少なくとも生きていられるんじゃないかって、思ったんじゃない?俺は奴隷の事はよくわかんないけど、お前が今生きてるのが、その証拠だろ」

「……………」


…奴隷は、主人に養われる。

少なくとも、私はナタナの家で、飢えに苦しむ事はなかった。

いつも空腹だったのは、奴隷屋にいるときくらいで。


「…無理矢理な考えかもな。でも、両親に『捨てられた』って思うよりは、『生かされた』って思うほうが、いいかなって」

「…………うん…」


…ルトの憶測が、本当か間違いかは、もう誰もわからない。

けれど、そんなふうに思う事も、できるのか。

恨むのではなく、感謝する。

奴隷になってから、ずっと父親に『捨てられた』と思っていた私には、全く新しい考えだ。


「…すごいね、ルト」


見上げると、ルトは「なにが?」と不思議そうにこちらを見ている。


「…そういう考え方ができるの、すごいなって思ったの」

「そう?」

「…私には、できなかったから…」


私は、父に嫌われていたのだと。

私は、愛されていなかったのだと。

…そう、思っていた。