この服をまた着ろと言うのなら、そうするけれど。

奴隷屋にいるときは、それが当たり前だったから。

そう言われるのだろうかと思っていると、予想に反してルトは「大丈夫」と笑った。

「服なら、俺が今からその辺で買ってくるよ。おばさんに脱衣所に置いといてもらうから。下着は悪いけど、後で自分で買ってくれ」

ルトはそれだけ言うと、ひらひらと手を振って外へ出て行く。

私は脱衣所の前で、呆然と彼の去って行った扉を見つめた。

…新しい服を、買ってきてくれるのか。

驚きを隠せないまま、私は脱衣所の扉を開いた。





ピチャ、と、雫が髪から滴り落ちた。


私の他に二人の女性がこの浴場を使っているだけで、浴場内には水音が響いている。

髪を洗いながら、風呂に入るのは何日ぶりだろう、と思った。


エルガは時折店を空け、奴隷の子供達を浴場へ連れていってくれた。

二週間に一度だったり、一ヶ月に一度だったり、頻度はその時によるけれど。

しかし、奴隷を風呂へ行かせるなど、私には到底考えられないものだった。

ただでさえ、この貧富の差が激しいペルダインでは、風呂というのは貴族が入るものだと言われるくらいなのに。