この服をまた着ろと言うのなら、そうするけれど。
奴隷屋にいるときは、それが当たり前だったから。
そう言われるのだろうかと思っていると、予想に反してルトは「大丈夫」と笑った。
「服なら、俺が今からその辺で買ってくるよ。おばさんに脱衣所に置いといてもらうから。下着は悪いけど、後で自分で買ってくれ」
ルトはそれだけ言うと、ひらひらと手を振って外へ出て行く。
私は脱衣所の前で、呆然と彼の去って行った扉を見つめた。
…新しい服を、買ってきてくれるのか。
驚きを隠せないまま、私は脱衣所の扉を開いた。
*
ピチャ、と、雫が髪から滴り落ちた。
私の他に二人の女性がこの浴場を使っているだけで、浴場内には水音が響いている。
髪を洗いながら、風呂に入るのは何日ぶりだろう、と思った。
エルガは時折店を空け、奴隷の子供達を浴場へ連れていってくれた。
二週間に一度だったり、一ヶ月に一度だったり、頻度はその時によるけれど。
しかし、奴隷を風呂へ行かせるなど、私には到底考えられないものだった。
ただでさえ、この貧富の差が激しいペルダインでは、風呂というのは貴族が入るものだと言われるくらいなのに。