月夜の翡翠と貴方



「…夜会、がんばれそ?」


セルシアはすくっと立ち上がると、堂々とした声色で「もちろんですわ」と言った。





『日が沈む頃に、もう一度邸へいらしてください』

なんでも色々と準備があるそうで、外まで見送りに来てくれたセルシアは、そう言うと邸へ戻って行った。

日が沈むまでは、村で自由にしていて良い、ということなのだろうが…


「なにもねーからなぁ、この村」

下層への階段を降りながら、ルトが呟く。

そうなのだ。

ディアフィーネは、本当に何もない。

必要最低限の建物さえないのだから、一体どこで暇をつぶせというのだろう。

まだ昼過ぎくらいだから、日が沈むまではかなり時間がある。


階段の最後の一段を降り終えると、ルトが「大丈夫かなー」と明るい調子で言った。

「なにが?」

「ロディー様。あれ結構面倒そうな性格してるじゃん。セルシア嬢は頑固そーだし、大丈夫かなーって」

確かに。

セルシアがロディーを好きになればいい、なんて、結構大変かもしれない。