月夜の翡翠と貴方


「ん」

ルトが明るく笑うと、セルシアも僅かながら微笑み返した。

…さすがだなぁ、と思う。

私にはとても出来ない。

ルトのこの笑顔を見たら、どうにかなるのではないか、と思えてしまう。


そこで、バン!と勢いよく部屋の扉が開いた。

「お嬢様!?先程ロディー様がおひとりで廊下を歩かれていて、なにかあったので…………は………」

語尾は、あまりよく聞き取れなかった。

息を切らして部屋へ入ってきたノワードは、セルシアの赤くなった目元を見て固まった。


「あ…ノワー…」

「お、お嬢様っ!?なにがあったのですか!!」

これはなんでもないのよ、とでも言いたかったのだろうが、ノワードが顔を青ざめさせて慌て始めたために言えない。

「ま、まさかロディー様ですか!?なにか言われたのですか!?やっ…やはり無理矢理婚約などするべきでは…」

セルシアのそばに駆け寄ると、ノワードは目をぐるぐるとさせ、あたふたと早口でなにかを言っている。