月夜の翡翠と貴方



「…キスは、少しやり過ぎだろうけどな」


私とセルシアのやりとりを見つめながら、ルトが苦笑いをこぼす。

…それは本当に、その通りだとは思うが。

セルシアは私の言葉をきいて、落ち着いたようだった。


「…まぁ、でも」

ルトが隣でしゃがむと、セルシアへ歯を見せて笑いかけた。


「ロディー様は、心底セルシア様に惚れてるってことだろ。他の令嬢とは違う何かを、見出しちゃったらしーし」


ルトの言葉に、セルシアの涙で赤くなった頬が、別の理由でさらに赤くなっていく。


「ロディー様は、この婚約に不満はないんだよ。だから、あとは君次第。セルシア様が、ロディー様を好きになれるかどうかだな」


「……………………」

セルシアはしばらくルトの目を見つめたあと、俯いて「……そうですよね」と呟いた。


「…私が、ロディー様の良いところを、見つければ良いのですね」


そう言った瞳には、かすかな希望と決意が見えた。