…彼女の気持ちは、最もだろう。
「…とんだ猫かぶりだな」
ルトがため息をついて、呟いたのは恐らくロディーのことだ。
部屋に入って来た時は、穏やかそうな貴公子だったというのに…
ロディーの本当の性格は、どうやらだいぶ紳士とはかけ離れているらしい。
ひっく、ひっくとしゃっくり声を上げて、セルシアが泣いている。
婚約者といえど、ほぼ初対面の相手に唇を奪われては、たまったものではない。
私は膝をついて、セルシアと目線を合わせると、彼女の背中を優しくさすった。
「…セルシア様。お気持ちは察します。けれどロディー様も、きっとセルシア様にわかっていただきたかったのだと思います」
「…っなにを…?」
「ふたりきりで話したいと仰ったのも、きっとご自身の本当の性格を、最初に知っていて欲しかったのだと思います。これから妻となるお方に、外交用の振る舞いを続けていくなんて無理ですし」
これは、完全に私の推測でしかない。
けれど、ふたりきりで話し、自分の性格をセルシアにまず知ってもらうことが、彼は大切だと考えたのではないか。
そう考えたほうが、今卑屈になるよりはずっとましだと思った。



