月夜の翡翠と貴方



「君としても、この縁談はディアフィーネにとって大切なもののはずだ」

その言葉に、セルシアの顔が苦いものになる。

その顎に人差し指を添えると、ロディーはフ、と笑った。


「……今夜の夜会、楽しみにしているよ」


コツン…

革靴を鳴らすと、ロディーは身を翻して静かに部屋を出て行った。


「……………………」

…しんと静まり返る、室内。


セルシアは、桃色の髪を下げて俯いていた。

心情を察したルトが、彼女へ近づき声をかけようとする。


「……あんな…人だったなんて…」

しかし、先にセルシアが肩と声を震わせて、小さな声で呟いた。


「…セルシア様」

私が静かに呼ぶと、セルシアは瞳に涙を溜めて、ぱっと顔をあげた。

「…あ、あんな方だったなんて…!わ、私っ…あんな方の妻になるの!?嫌!嫌です…!」

セルシアは唇を噛み締めて、そうこちらへ訴えてくる。