月夜の翡翠と貴方



「…………!?」

驚いて目を見開くセルシアに構うことなく、ロディーはその手を彼女の頬へ滑らせ…


そして、セルシアへキスをした。


「……………!」

一瞬の出来事。

唇は直ぐに離されたが、目を見開く私達とセルシアに、ロディーはフ、と笑った。

「よろしく、私の未来の妻」

美しいその笑みは、きっと普通の貴婦人なら見惚れてしまうのだろう。

しかし、セルシアは顔を真っ赤に染め、わなわなと唇を震わせていた。

「………いっ、いきなりなにをなさるのですか…………!」

絞り出した声には、驚きと確かな怒りが含まれている。

…婚約者といえど、今日ふたりはやっと再会したばかり。

さすがに急ぎすぎだ。

隣でルトは、「やるなぁ、ロディー様」なんて小声で呟いているが。

赤くなった表情を見たロディーは、それでも変わらず目を細めセルシアを見つめる。

先程までの穏やかそうな雰囲気は、どこへ…?