月夜の翡翠と貴方



セルシアはひとつ喉を小さく鳴らすと、ロディーを見つめた。

「…ふたりで話すのは、またあとにしましょう。庭園も見ていただきたいですし…時間も充分あるのですから」

何故突然ふたりで、と言い出したのかわからないが、セルシアがそう言うのも無理はないだろう。

ロディーはもう一度こちらを一瞥すると、静かに「わかりました」と言った。

…なんだか、ロディーの嫌な視線を感じるが。

今は一応の主人であるセルシアが出ろと言わないのだから、私達はこのままでいる事にする。

彼はセルシアを見たあとに、またこちらを一瞥してくる。

そしてセルシアへ視線を戻し、唇の端をに、と上げた。


「…改めて、セルシアさん。この度は縁談を受けてくれて、ありがとう」


先程とは少し違う笑みだったけれど、セルシアはそんなことも気にする余裕すらないというように、戸惑いながら返事をした。

「い…いえ。こちらこそ、ロディー様のような素敵な方がお相手で、とても嬉しいですわ」

美しく、そして愛らしく微笑んだセルシアに、ロディーはより口の端を上げた。


「……素敵な方…かどうかは、わからないがな」


…ん?

突然変わった、口調と雰囲気。

見ると、先程の穏やかそうな顔つきではなく、彼は自信にあふれた男の顔つきをしていた。

カタン、と席を立つと、そのまま手をセルシアへと伸ばす。