月夜の翡翠と貴方



「どうぞ」

落ち着いた声色で、ソファーに座ったセルシアが、返事をする。

そして、扉が開いた。


「お久しぶりですわ、ロディー様」

コツ…

上等な黒の革靴が、音を鳴らした。

扉から見えたのは、黒髪の若く美しい男。


「…お久しぶり、セルシアさん」


ロディーは、愛想よくセルシアに微笑む。

…彼が、モンチェーンからやってきた、婚約者。

穏やかそうな風貌である。


「どうぞ、席におかけ下さい」


ロディーが、セルシアの向かいのソファーに腰掛ける。

すると、一緒に部屋へ入ってきた彼の執事に、部屋を出るよう指示をした。

執事は、なにも言わず部屋を出る。

「……? ロディー様…」

セルシアが、戸惑った顔をした。

何故、執事を部屋に出したのだろう。

この空間には、ロディーとセルシア、私とルト、ノワードしかいない。