月夜の翡翠と貴方



すると、横でルトが、「なぁ」とセルシアに声をかけた。


「その、ロディー様…とは、初対面じゃないんだろ?」


訊かれたセルシアは、苦い顔をした。

「…ええ。幼いときに、一度だけ…ロディー様がこちらにいらしたことがあって…一緒に遊んだ、らしいですわ」

らしい…ということは、セルシア自身はあまりよく覚えていない、ということか。

「今いくつなの?ロディー様」

「…確か、私のふたつ上です」

「俺と同い年かぁ」

ということは、ロディーは十九。

歳は近い。

相手次第ではあるが、悪くない縁談ではある。


「ですが…やはり、それきりですので。どんなお方になっているか、わからなくて…」

セルシアが、不安そうに眉を下げる。

早いうちから婚約が決まっていたのなら、もう少し早く当人同士を会わせてやればいいものを。

そんなに、最近決まった婚約なのだろうか。


「お優しい方だといいですね」


私が微笑むと、セルシアは唇をきゅっと結んで、しっかりとした顔つきで「ええ」と言った。






コンコン、と部屋の扉からノック音が聞こえた。