月夜の翡翠と貴方



ぎこちない私の口調に、ルトは満足気に笑顔を見せた。


「それでよし」


………変な、男だ。

ルトは私の疲れた顔を見ると、ははっと笑った。

そして、再び歩き出す。


「お前のことは、なんて呼んだらいい?あ、店主に呼ばれてた名前。なんだっけ?えーっと」

「……『ファナ』?」

「そうそう、それ!…本名?」

ふるふると、私は首を横に振った。

「エル……店主が、つけてくれた」

「そーなんだ。じゃあ、その名前で呼んだほうがいいのか?」

「えっと……その時買われた主人に、つけてもらうことが多い」


だから私には、いくつも名前がある。

全て、売られたときや買われたときに、捨ててしまったけれど。