月夜の翡翠と貴方



「…つまりは、奴隷の私を買うと」

「そうなるな」


…悪いが、それは出来ない。


そう言おうとしたとき、レグートの目の前に剣の刃が突きつけられた。

…ルトの、剣だ。


レグートは少し驚いた仕草を見せたあと、いつの間にかテラスに入って、彼を睨んでいたルトを見て、ふ、と笑う。

「…そういえば、訊いていなかったね。あなたはマリアのなんなんだい?」

「………友人」

ルトの深緑の瞳は、とても暗くて、鋭い。

低い声で、レグートに嘘を伝える。


「へぇ。では、友人どの。これはマリアと私の大切な取引なのだよ。邪魔しないでくれるか?」


…ごめん、ルト。

すぐ、終わるから。

もう、何もしなくていいのに。

再びこちらへ目を向けたレグートに、ルトがチャキ、と音を立てて剣を動かした。


「………しつこいね」


今度は明らかな敵意を見せて、ルトを睨んだ。

それを睨み返すと、ルトはふと私へ目を向ける。

そして少しの間私を見つめると、再びレグートへ目を向けた。


「……何か、言いたげだね」

依然口元の弧を崩さないレグートを見て、ルトは目を伏せた。

まるで、何かを迷っているように。

苦しそうに、無言で。