月夜の翡翠と貴方



「やっと見つけたよ。マリア」


頭が、痛い。

息が、くるしい。

激しい動悸がして、吐き気が襲ってくる。


それでも、私は冷静を保つために男達を見上げた。

息を整えながら、焦りや戸惑いを押し殺した強い声で、言うべき事を言う。

言わなければならないことを、男達の言葉を、否定するように、言う。


「…その名の者は、もうおりません。私は、マリアではありません」


私は、ジェイド。

今の私は、ジェイド。

ルトからもらった、ジェイドという名の、奴隷。


「…そんなはずはない。その橙の瞳と、フードに隠れた碧色の髪は、確かにリズパナリ家のマリア嬢だ」

向けられた視線に、私は目を逸らした。

この男達は、何者なのか。

何故、その名を知っているのか。


様々なことが頭を混乱させ、私をまたあの遠い記憶へと戻す。


「…あなたたち、誰…………?」


浅い息を吐きながら問うと、男は口の端をつり上げ、貴公子のごとく腰を折った。

「私の名は、レグート。貴女を迎えに来た」

「迎え………?」

「そう」

そこで、ずいっと男の顔が間近に迫ってきた。

不気味に見開かれた黒い瞳から、目を逸らすことができない。