月夜の翡翠と貴方



戸惑うと同時に身構えると、男達は私のテーブルの前に立った。

口元に微笑が浮かんでいる図体の大きな男が、静かにこちらを見据える。


「…何か…」

「やっと見つけた」


御用ですか、と訊こうとして、遮られた。

見つけた…………?

眉をひそめる私を見て、男はニヤ、と笑う。


そして、私を嘲笑うように、皮肉げにその言葉を口にした。



「…やっと見つけたよ。矢の挨拶は、残念ながら貴女に伝わらなかったようだがね。……初めまして、『マリア・リズパナリ』」



…薄暗いテントのなかで、私は確かに捨てたのだ。


引き裂かれたはずの、その名を。






店員だという男について行き、カウンターの前へ行く。

しかし、男の歩みは止まらない。

俺に用があるという人間は、カウンターにいるのではないのか。

「来てください」

相変わらず、にこにことしている男。

戸惑いながらも、足を進めた。

振り返りカウンターへ目を向けると、布でグラスを磨く店員が見える。

その店員は俺の視線に気づくと、不自然に気まずそうな顔をして、俺から目をそらした。