月夜の翡翠と貴方



知り合い?

店員だという男の言葉に、ルトは眉を寄せた。


「名は?」

「会えばわかると、仰っています」

「……………」


ルトの知り合いが、一階のカウンターにいるらしい。

私達が二階に行く際、気づいたのだろう。

ここは、ミューザの隣村だ。

ミューザというのは、リロザやミラゼ、酒場の人々と出会った街の名前。

ルトの知り合いがいても、おかしくない。

ルトは少し考える素ぶりを見せたあと、「わかった」と返事をした。


「連れは一緒に行っても?」

ルトが私を指して言うと、男は変わらない笑顔で「出来ればおひとりで」と言った。


「…………わかった」


やがて席を立つと、ルトはこちらを強く見つめた。


「何かあったら叫べよ」


その瞳は真剣で、私は静かに頷いた。

...きっと、あの夜の酒場のことを言っているのだ。

私が見知らぬ男達に声をかけられた、あの夜のことを。