月夜の翡翠と貴方



「………眠く、ならない。しばらく起きとく」

「そ?」

テント越しに、ルトがかすかに笑っているのがわかる。

私は目を細めると、テント越しに彼の影を見つめた。


「……………………」


...会話はなく、静かだった。

でも、この雰囲気が好きでもある。

…何も、言わない。

この気持ちは、もう伝えない。

そう決めたから。


この雰囲気に、心地よく目を伏せるぐらいは、許してもらえるだろうか。






もう一晩テントで寝て、昼前に着いたのは、小さな村だった。

古ぼけた村の看板には、かすれた文字でかろうじて読み取れる【ディアフィーネ】という村の名前。

今に崩れそうな門をくぐると、私とルトは目を見張った。


「…なんだ、ここ…………」


呆然と、ルトが呟く。

辺りを見回し、目に映るのは、活気をなくした村の様子だった。


路上には、生気を失った瞳でうずくまる村人の姿が、ちらほらと見え。

村に点在する店や家は、古ぼけ、朽ち果てそうになっている。

道を歩く者は、今にも倒れてしまいそうなほど、ふらふらとしていた。