月夜の翡翠と貴方



指示通り立つと、今度は後ろ向いて、と言われる。

そのままルトに背を向けると、後ろ髪に触れられたのがわかった。

「……切られてるな。毛先が一部」

…気づいていたのか。

「…うん。頬の傷もそうだけど、ナイフ、避けきれなかった」

「あんだけ避けれたら、充分すげぇよ」

はは、とルトが笑う。

…心地良い。

いつもの会話が、こんなに心地良い。


前を向き直ると、ルトと目があった。

いつもの、明るい深緑だ。

「…どした?」

じっと見ていると、ルトが不思議そうな顔をする。

その顔も、全部。


「……嬉しいの」


ぼうっとする頭が、愛おしい、と叫んでいる。

「…なにが?」


愛おしい。

全部、好き。


「…………なんでも、ないよ」


でも、そんなことは言えない。

普段の私なら、こんなことを考える頭に、自分で叱責を与えるのだろう。