「母さんはいい人達だって言うから、契約を切らないでいたのに…こんなひどい目にあったら、クリセリカも何もないわ!」
確かに、ここでユティマが怒るのは仕方ないだろう。
彼女は、エルフォードのいざこざに巻き込まれたに過ぎない。
小柄なユティマが、怒りのにじんだ目でリロザを睨む。
せっかく木箱を守ったというのに、このままでは契約を切られそうだ。
その可能性を考えたリロザが、焦り始めた。
「ま、待ってくれ。今回の事は、本当にすまなかった。エルフォードの名にかけて詫びる。だが、契約を切るのは…」
「知らないわよ!こっちはいつ契約を切ったって構わないんだから!二度とこんな目に遭いたくない!」
リロザが、困ったように眉を下げる。
不思議な光景だと思った。
貴族であるリロザが、平民の町娘に過ぎないユティマに、情けなく眉を下げている。
すると、そこでムクギが優しい声で「ユティマ様」と呼んだ。
「今回は、誠に申し訳ありませんでした。大切なユティマ様に、このような目に遭わせてしまい…どうお詫び申し上げたら良いか」
『大切なユティマ様』に反応したのか、ユティマが思わず文句を飲み込む。



