月夜の翡翠と貴方



浅い息を吐いて、男から離れた。


「このっ………………」


男が血走った目を見開いて、こちらへ拳を振り上げてきた。

しかしそこで、男の目の前にナイフが飛んでくる。

そしてそのまま、ダンという短い音と共に壁に突き刺さった。

驚いた男が、思わず動きを止める。

そしていつの間にか部屋へ入っていたルトが、その首を蹴った。

壁に体を打ち付けた男が、苦しげに顔を歪める。

ギィン!

間髪いれずに、男の顔の真横に、ルトの剣が突き刺さった。


「…お前らは、出会う先々でそーやって声かけてんのか。節操ない奴らだな」


半ば呆れたような瞳で、ルトが男を見下ろす。

男は血の滲んだ脇腹を押さえながら、憎々しげに彼を見上げた。

その視線を、冷たい瞳でかわすルト。

緊張の解けた私は、浅い息を吐きながら、その様を見ていた。

…伝わった、だろうか。