月夜の翡翠と貴方



ルトが、悔しげに男を睨む。

その横にいるリロザも、不安そうな顔つきでこちらを見ている。

その視線に、男はニヤ、と笑った。

おもむろに、男が私の髪に触れる。

「…綺麗な髪してんね、嬢ちゃん」

「………………」

興味なさげに、無言で目をそらす。

.....触らないでほしいとは、思うけれど。


「…身なりは粗末だけど、風貌は平民の女じゃないね。嬢ちゃん、どっかの令嬢?」


令嬢が、こんなところにいるはずないだろう。

そう言いたくなるのを抑え、あくまで静かな声色で返事をした。


「……………いいえ」


どうしようか。

男が動くまで待つのは、遅すぎる。

こちらから動かないと、危険だ。

ちら、と扉の方を見ると、ミラゼがナイフを持ってこちらを見ていた。

…どうにかして、彼女がナイフを飛ばす隙を作らなくては。

男が、傷のある私の左頬に触れた。


「痛々しいねぇ…もったいない。傷一つなければ、高値で売れるのに」


にっこりと、笑う男。

私は忌々しげに、彼を見た。


.....大嫌いだ、その目。