月夜の翡翠と貴方



彼の手が、碧の髪の一房を掬った。

そしてそれを、自らの口元に近づけて。


......口、付けた。


「……なに驚いた顔してんの。慣れてんじゃねーの?」


そう言って、ルトはニヤニヤと笑うけれど。

…少し、甘く見ていたらしい。

前に、場数を踏んでいるとは思ったが…

これは。

口元に笑みを浮かべ、彼は私の頬に触れる。

何か言おうと試みるが、言葉が出てこない。

その様子を見て、ルトはより妖艶に微笑んだ。

「…言ったじゃん。お前の事、そーゆーふうに見ようと思えば、見れるって」

言った。確かに、言った。

けど。

妖しく光る深緑から、目がそらせない。


「………お望みなら、だっけ?」


楽しそうに、ルトは私の髪を弄ぶ。

…そう、言った。前に、私は。

なのに、今、その言葉が出てこない。

どうしようもなく、今私は、戸惑っている。

おかしい。どうして。

甘い笑みに、くらくらする。

何も…言えない。