月夜の翡翠と貴方



…ルト。


「…私は、私の目に映るルトしか知らない。他の人が見ているルトの姿なんて、知らないの」


ミラゼが言った、彼の姿。

私が見た、暗い暗い深緑。

ふたつが重なって、私のなかで『本当の』ルトの姿が浮かぶ。

でも。

それは確実に、私の知るルトではない。


「…ルトがどんな人間だとしても、私は目の前にいる今のルトしか信じられない。…幻滅なんて、しないよ」


彼の目が、大きく見開かれる。

そしてすぐに、その瞳は強く私を見つめた。

その強さに、弱い私は逸らしてしまいそうになる。

耐えて、見つめ返した。


するとルトは、ニヤ、と笑った。


……あ。

空気が、変わる。

ルトの笑みが、妖艶なものになった。

どくん。

動悸が激しくなる。

…いきなり、は、やめて欲しいのだが。

前に一度見たものとは、全く違う。