月夜の翡翠と貴方



「……ジェイド、言ったよな。自分は、俺の優しさをもらう価値ないって」


ギシ、と寝台が軋む。

シーツが擦れる。

わからない。

わからない。

何故、ルトがこんな話をするのか。

「……それは、違うんだよ、ジェイド」

......わからない。

わからないよ、ルト。

何故、そんな。

「…俺こそ、だよ」

そんな…………


「俺こそ、お前にそんなこと言われる価値、ないんだよ」


苦しそうな、顔をしているの。


「………………ルト」

「俺は、ジェイドが思ってるほどいい人間じゃない。お前が想像するよりずっと、…ずっと、最低な奴なんだよ」


ルト。

呼ぼうとして、言葉が声にならずに空気に消える。

なにを言っていいのかわからない。

戸惑いと苦しさに、私は眉を寄せて見上げた。

彼は、やっぱり自嘲気味に笑っていて。

私の頬を、彼の指が滑る。

優しく、なぞる。


「………お前は、綺麗だよ。汚くなんか、ない。....綺麗だ」


…………ああ。

ルトが、私に言う『綺麗』の言葉は、他の人間とは全く違う。