月夜の翡翠と貴方



端正なルトの綺麗な顔が、男の顔をしている。

テラスのガラス扉から、月明かりが部屋を照らしていた。

月光によって、ルトの笑みが、妖しい魅力に包まれる。

ー………綺麗。

惚れ惚れする美しさ。


「…………ジェイドは、わかってないんだよ」


ルトの顔つきが、変わった。

少しばかり苛ついたように。

声が、低くなる。

初めて向けられたルトの荒々しさに、私は眉を寄せた。

ルトの指先が、優しく、そっと私の白い頬に触れる。

少しだけ、胸の動悸が早くなった。

けれどその行動とは裏腹に、表情に現れた感情は、優しいものではなかった。


「……覚えてる?お前が、自分は汚れてるんだ、って取り乱した夜の事」


驚いて、目を見開く。

あの日の夜のことを、ルトが口に出すのは初めてだ。

「……覚えてるよ」

何故、今それが出たのだろうか。

私はてっきり、ミラゼの話を聞いてしまった事を、怒られるのだと思っていた。

戸惑っていると、ルトは口元に笑みを浮かべて見下ろしてくる。