月夜の翡翠と貴方



「しかし先代は諦めず契約を迫った。そしてついに断るのにも飽き飽きとしてきたあちらの店主が、ある条件を出してきてな」

クリセリカの実を持ってきて欲しい、というものだった。

「クリセリカ?」

「とても育てるのが難しい植物だ。その実を趣味に使いたいと言って、契約の条件に出してきたのだ」

どうしても契約を結びたかった先代は、その条件をのんだ。

それから、高価なクリセリカの種を取り寄せ、育て、年に一度なる実を届けた。


「それを、今も続けている」


「……それで?」

ずっと黙っていたルトが、顔を上げリロザを見た。

「…それでだな。今、その実を届ける役目になっているのが、私なのだ」

三年前からなのだがな、とリロザが難しい顔をする。

「なんとかつい最近、ひとつ実をつけた。他はもうダメになってしまった」

だから、明日届けるらしい。

あちらの店主は、契約してからもう何年も経つというのに、一度でも実を届ける条件を絶やせば、契約は破棄すると言っている。

「あの絹織物は、今やエルフォードにとって大切な商品だ。高値で売れる。今年はひとつしか実がならなかった。明日、必ず届けなければならない」

リロザがふう、とため息をついた。