月夜の翡翠と貴方



ひとり、状況についていけていないリロザが、動揺している。

「ジェ…ジェイドさんは知らないのか。話してはならないことだったか」

「いいえ、いいわよ。話、続けて?ね、ルト」

ミラゼの美しい瞳が、ルトを見つめる。


「…………ああ」


彼は、なんとか普段の表情に戻っているようだが、目線は下を向いていた。

もう、こちらを見ようとはしない。

...ルトのこんな顔、初めて見た。

私がさせたのだ。


予想していなかった空気の重さに、リロザがひとり戸惑いながら話を再開する。

ミラゼは、やはり笑みを浮かべていて。


「えーと…だな…実は、私は明日、少し遠出をする予定があるのだ。といっても、途中の宿で一泊するぐらいで着くのだが」


そこは、エルフォードにとってとても大事な取引先だ、とリロザは言った。

なんでも、その取引先が、エルフォードを支えていると言っても過言ではないらしい。

「その取引先というのがな、先代から関係が続いている大切なものなのだ。しかし、その取引先は、貴族家のものでもなんでもなく、街の小店に過ぎないようなところでな」