月夜の翡翠と貴方



益々そんな貴族が何故この酒場にいるのかと思ったが、今はそれよりこの状況こそが疑問だ。


「えーと…リロザ様」

「様はいらない。ここでの私は、貴族ではなく君たちと変わらない一般町民と見てくれ」

だったら何故わざわざ、自己紹介をあんな得意げにしたのか。

戸惑いながらも冷静を保とうと、私は恐る恐る尋ねてみた。


「…運命…といいますと?」

「ああ。回りくどい言い方をしてすまない。つまりは、ジェイドさん。私は貴女の美しさに一目で心奪われた」


思わず、眉をひそめる。

リロザは自身の金髪をかきあげると、紫の瞳を輝かせこちらを見つめた。

「だからジェイドさん…私と、おつきあ」

そこで、リロザの体が勢いよくこちらに傾いてきた。

「!?」

見ると、彼の後ろにルトが立っている。

ルトが、後ろからリロザの背中を蹴ったらしい。