月夜の翡翠と貴方



…なんだか、見覚えがあるような。

記憶を探っているうちに、昼頃のことを思い出した。


「…………あ。今日ぶつかった…」

「そうだ!やはり、貴女だったのか!」


彼は、ぱぁっと顔を明るくさせる。

どうやら、今日ルトとはぐれた際、通りでぶつかってしまった貴族のようだ。

あのときとは違うジャケットを着ているから、わからなかった。

偶然の再会に驚くが、何故貴族の男が、庶民の娯楽の場である酒場に。

「……えっと、あのときは申し訳ありませんでした…」

一応謝ると、男は「こちらこそすまなかった」といいながら、こちらへ向かって来た。

それに驚いて、男を見つめる。

...なっ、なにか、気に障るようなことをしただろうか。

酒場の人々も、騒ぐのをやめて私達の成り行きを見ている。

男は目の前まで来ると、私の姿を見て感嘆の声を漏らした。


「……き、君、名は」

彼は瞳を輝かせ、私の顔を見ている。